vendredi 31 mai 2013

鴉よ、おれたちは弾丸をこめる Corbeaux ! Nos fusils sont chargés! / Yukio Ninagawa @ La maison de la culture du Japon

パリ日本文化会館があるおかげで、日本から遠く離れた、パリでも日本の演劇や舞踏、映画が観れるってのは、すごくすごくありがたい。茶道のこともあるけど、この日本文化会館は、毎年何回もお世話になっていて、企画されている公演もなかなか面白い人が来てくれてうれしい。それに、日本よりも、チケットの値段がかなーり安い。この値段で大丈夫なの?と、心配になるくらいの安さ。海外公演ということで、国からの手厚い支援があるのかな、どうかな。

今回は初めて、蜷川作品を観ることができた。大学生の頃は、三田にも通って演劇の授業をとっていたから、そこではたくさんの蜷川作品のダイジェストを映像で見せてもらっていたけど、日本の劇場で生の公演を観るのは、本当に高くて、貧乏学生にとっては手に届かない、とても贅沢なものだと感じてた。

この作品はさいたまゴールド・シアターという、65歳以上の個性的な素人たちを集めた劇団。蜷川さん自ら数千人の応募者を面接して選んだ、選りすぐり。80歳を超えた役者さんたちもこの舞台に立っていたっていうから、ほんとうに日本のおじいちゃん、おばあちゃんたちはパワフル!


http://www.saf.or.jp/gold_theater/index.html










最初、この下の画像みたいに、水槽に入ってたおばあちゃんたち。







mercredi 22 mai 2013

Drumming / Anne Teresa de Keersmaeker @ Théâtre de la ville

Musique / Steve Reich "Drumming"
Costumes / Dries Van Noten

比べるのは少し違うけど、最近まで、ほかのダンスカンパニーや振付家に興味をそそられて、あんまり気にしてなかったのだけれど、改めて間髪いれずに二つの作品を観てしまうと、アンヌ・テレサの素晴らしさに、酔いしれてしまった
アンヌ・テレサは、やっぱり自分のダンス好きの原点で、どの作品からもいつも衝撃を受ける。


http://www.rosas.be/fr/production/drumming

http://www.rosas.be/fr/production/drumming

http://www.rosas.be/fr/production/drumming

mercredi 15 mai 2013

Antigone / Ulrike Quande Company @ La Maison des métaillos

日本のマリオネット、といえば、人形浄瑠璃、文楽ですが、今回のプログラムを見てみると、なんと去年文楽を学んできたというオランダのアーティストが率いるグループの公演があって、すごく興味を惹かれて観に行ってきました!

2001年にアムステルダムでマリオネットの劇団、Ulrike Quade Companyを立ち上げたUlrike Quade は、去年2012年1月に日本へやってきて、文楽、それに能や歌舞伎も学び、文楽の人形を使った作品を作ろうと決意。(彼女が大阪へ文楽を観に行ったとき、寝てしまってるお客さんがたくさんいたことに、とっても驚いていました!)舞台で使う人形も、日本の人形師、渡辺かずのり氏が担当していて、日本の人形が、着物ではなく、洋服を着ていて、髪の毛も金色や茶色というのは新鮮でした。

そして、日本が大好きなUlrikeは、なんと20年くらい前にはすでに日本に数ヶ月間滞在して、百鬼どんどろを創設した、故 岡本芳一さんに師事してました!人形遣いが一言もしゃべらないで人形の世界には絶対に入らない文楽とは違い、Ulrikeの舞台では、人形と語ったり、一緒にダンスしたり、同じ世界にいるように演じているのは、岡本さんの表現の仕方に影響を受けていると思いました。


http://www.ulrikequade.nl



今回の舞台は、政治情勢が安定しない現在のオランダで、その状況をしっかりと見据えて、"人としてどう振舞うべきか?"を問うために、ギリシア神話の「Antigone(アンティゴネー)」を題材にしてます。
登場するのは、テーバイ王オイディプスの子、ポリュネイケス、アンティゴネー、イスメーネーの三人。ポリュネイケスは国から追放され、もう一人の兄弟エテオクレースと相討ちとなって死んでしまうのです。ポリュネイケスを葬ることを国の法律で禁じられたのに、アンティゴネーは自分の信念に従って、彼に砂をかけ弔い、そのことで捕まり、獄中で自害するという悲劇の物語!




photo: Anja Beutler
「表情豊かに優雅に舞う日本の文楽に魅せられた」と語っていた、Ulrike。「日本の文楽とヨーロッパのマリオネットの一番大きな違いは、ヨーロッパのほうは "話すこと" がメインで、口が動き、1人で操ることが多い。もちろん数人で操ることもあるけど、日本の文楽は三人で1つの人形を操り、そして踊るように動くところが素晴らしい。それに、歴史が古く、基盤がしっかりとできていて、バックグラウンドもとても興味深い」と語ってくれました。

私自身は、去年、大阪市の助成金の問題で話題になってから文楽が気になって少し調べたりしていた程度で、文楽劇場まで足を運んだこともないし、ほとんど知らないのですが、文楽では、人形たちの舞台と操る人立つ場所が分けられてることが多いと思います。だけど、Ulrikeの劇は、その人形のための舞台を取っ払って、人形と人との境界をなくし、前後の奥行きの動きを加え、さらにはジャンプして宙を舞ったりして、地からも自由になり、よりダイナミックで迫力あって、どきどきさせてくれる作品で、とっても面白かったです。

(ギリシア神話を元にしてるとは言っても、舞台は現代なので)森の中でカンフーしたり、銃を撃ち合うシーンで、操ってる人が1人ずつ倒れて、それと同時に操っていた部位が外れていくのが衝撃的だった、ポリュネイケス、牢獄に閉じ込められるシーンで操る三人でひっぱりながらも、同時に抵抗してる様子を表現していて、本当に4人いるように感じたアンティゴネー、1人寂しく残され最後もう一度登場して、この悲劇を痛み、タバコを吹かしながらちょっとしたユーモアを交えて語り、観客を虜にしていたイスメーネー、三人とも本当に魅力的でした!

知らないところで、こうやって外国の人たちが日本の伝統芸能を広めていってくれていたことにはとっても驚いたけど、日本人よりも文楽に詳しく、そして興味を持って研究して、日本人じゃ考えもしなかった方法で新しい作品を作り、世界で発表しているUlrikeとその作品たちに出会えて、本当にうれしかったです。日本にいた頃はほとんど興味なかったのに、こうやって外国の人たちから文楽のことを教わったのは、少し変な感じがするけど、もっともっと文楽観てみたくなりました!

Ulrikeのマリオネットカンパニーでは、文楽の作品だけではなくて、人形や着ぐるみ、マスクを使った、様々な作品を作っています。積極的にいろんな人たちとコラボしたり、世界のマリオネットの権威ある賞を受賞していたり、他の作品もかなり面白そうで、もっともっと観たくなりました!来年までにすでに二つも新しい作品の準備をしているみたいなので、また会えるのをすごく楽しみにしてます!!

追記>
百鬼どんどろ、そして岡本芳一さん


 

mardi 14 mai 2013

Elena's Aria / Anne Teresa de Keersmaeker @ Théâtre de la ville


http://www.rosas.be/nl/production/elenas-aria
1984年に作られた作品。
五人の女性たちは、同じ生地のディテールは違うけどボリュームも同じタイトなワンピースに、黒のヒールの高いパンプスを履いてて、10脚のビンテージのカラフルな椅子たちが横一列に置かれて、舞台の中心には大きくチョークで円が描かれてる。

横からふいてくる扇風機の風に髪をなびかせながら、二人の女性は椅子の列の間を勢いよく行ったり来たり。そのイスからイスへの小さなくるっとした直線の動き(ぐるぐるを左から右に向かって描いてく感じ)は句読点がある。読点の役割をする、途中で座ってる人が増え、その人は左からやってくるぐるぐるに、どんどん押されて飛び出ちゃったりする、その彼女たちの動きの軌跡は模様に見えてくるのが面白い。記号化してテキスタイルができる気がする。

それに対して円は、永遠に終わりのなり繰り返し。ヒールの音をさせないように、スカートを捲り上げてまわりを確認し、くるっとして様子をうかがってから、コソコソと歩く。後から確認するために自分の居場所を記し付けておくように、急に止まり、ヒールを勢いよくコツンっと鳴らす。

椅子を求めるけど、椅子に嫌われ、転げ落ちる。

最後は全員で黒い椅子を持ち出して、幕が降りた緞前で一列になって座り、手持ち無沙汰の待ちぼうけの女性の仕草の部分部分を切り取り、それを組み合わせた振り付けが、とてもよかった。
初めてのアンヌの作品で、一瞬で心を奪われてしまい、ダンスの魅力にとりつかれた、忘れられないあのビデオ映像を思い出した。



日本人ダンサーのイケダフミヨさん、とってもかわいかった。容姿の整った西洋人たちの中でも、彼女が一番魅力的。アンヌもダンサーとして踊っていたけど、山海塾の天児さんのように、舞踏家の歳をとっていくほど踊りに洗練された透明な鋭さが磨かれていくのではなく、コンテンポラリーダンスのほうは、何が何でも体力がまず必要で歳には敵わないなのではないかと思ったことは、心の片隅にしまって、来週を楽しみにする。

vendredi 10 mai 2013

Boléro / Sidi Larbi Cherkaoui, Damien Jalet @ opéra garnier

Musique / Mauris Ravel
Costume / Riccardo Tisci
Scénographie / Marina Abramovic
http://en.vogue.fr/fashion/fashion-news/diaporama/riccardo-tisci-givenchy-paris-palais-garnier-de-l-opera-national-ballet-maurice-ravel-le-bolero-stage-costumes-dance/13081

photo VOGUE FRANCE /Agathe Poupeney - Opéra national de Paris / Inez & Vinoodh

10-20分の短い演目の、それぞれ振付家も違う4部構成だったのですが、最後の、Sidi Larbi Cherkaouiの振り付けによる、「Borélo」 がとてもよかった!!ダンサーたちが舞台に現れてからすぐ、会場全体も一瞬で惹き込まれてしまっていたし、劇場の脇にある個室になってる席の一番後ろだったので私も思わず立ち上がって身を乗り出して観ていました。それに加えて、当日もらったリーフレットで初めて知ったのですが、衣裳を担当してるのが、なんと、ジバンシィのクリエイティブ・ディレクター、リカルド・ティッシ!観に行ったその日、VOGUEのサイトでも、記事が載っていました。それに、舞台美術を担当したのが、ユーゴスラビア出身のパフォーマンスアーティスト、マリーナ・アブラモヴィッチ。
なんとも豪華な組み合わせ!!


Sidi Larbi と、マリーナの作品に関するインタビューが見れます。

ボリュームのある真っ黒のマントに身を包んだダンサーたちが、足踏みして登場。
有名な何度も聞いたことある、モーリス・ラヴェル作曲のバレエ音楽ボレロ。
舞台には、水滴が落ちて広がる、大きさの違う波紋のような渦が映し出されて、薄っすらと透けてる水面のよう。ダンサーたちは、それにつられるように、ぐるぐるまわりながら、気づかないうちに次々とマントを脱いでしまってた。そして、舞台の奥には、舞台全体を覆ってしまうくらいの大きさの鏡が斜めに設置され、そこにはダンサーたちと波紋が反射して映るから、限りなく向こうまで続くような、深くてブラックホールのような空間が広がってる。


photo VOGUE FRANCE /Agathe Poupeney - Opéra national de Paris / Inez & Vinoodh

ダンサーたちは、マントを脱ぐと、ほとんど肌が透ける素材に、骨格の模様が刺繍されているぴったりとした衣裳に、同じ素材の十分に裾に広がっていて、しかも薄くてほとんど見えないくらいのスカートを纏っていました。背景が暗いので、カメラのシャッターを長押ししたときのように、スカートによって足の動きの軌跡が目に見えるから、それがすごく面白い!!


photo VOGUE FRANCE /Agathe Poupeney - Opéra national de Paris / Inez & Vinoodh

 そうするとまたいつの間にか、スカートも取り外してて、完全なスケルトンに。
直線の行き来の動きはほとんどなく、くるくる小さな円を描きながら、全体でも大きな渦を巻き、鏡に映る姿も合わさって、柄が少しずつ変化していく万華鏡のようでした。

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オペラ座という、一歩入れば日常とは区切られた異空間で、この繊細で優雅な衣装、そしてオペラ座のダンサーたちの技術の高さ、すべてが完璧で、たった20分という短い時間だったのに、ここ最近溜め込んでた鬱憤も吹き飛んでしまうくらいに、すっかり魅了されてしまいました!

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もう、Boréloの文字を見るだけで、頭の中で音楽が流れ、踊るダンサーたちが巡っていて、まだ数日は続きそうー

かつて、恵比寿の東京都写真美術館の2005年の企画展「ローザスとアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの25年」でコンテンポラリーダンスに初めて出会い、ローザスとアンヌに衝撃を受けてから、ダンスや舞踏へ興味がわいてきました。それ以来ずっと一番好きな振付家はアンヌだったのに、その座をいつか脅かすかもしれない。そんなドキドキさせられた、まだ37歳、若手のSidi Larbi。帰る道すがら、家に帰ってからも、ずっと反芻してたし、気になってて調べてみたら、なんとアンヌが創ったダンスの学校、P.A.R.T.S.で4年間学んでいて、それもアンヌと同じベルギー人でした。私が好きになるのも納得。今後の活躍にかなり期待です!!

Taco blog VOGUE JAPAN にも載せています。